
日本を代表する細菌学者として伝染病対策に貢献してきた北里柴三郎。国内にとどまらず、世界からも栄誉・称号を授与されるほど、国際社会からも評価されています。そんな北里がどんな信念を持ち、己の道を進み続けてきたのか。北里の名言からひもとき、現代にも通じるメッセージをご紹介します。
<障害を乗り越えるには「熱と誠」を持ちなさい>
一つ目は、北里が同時期に留学していた親友の荒木寅三郎(後年、京都帝国大学総長に就任)に贈った言葉です。
「君、人に熱と誠があれば何事でも達成するよ。能(よ)く世の中が行き詰まったという人があるが、是(これ)は大なる誤解である。世の中は決して行き詰まらぬ。若(も)し行き詰ったものがあるならば、是(これ)は熱と誠がないからである。つまりは、行き詰まりは本人自身で、世の中は決して行き詰まるものではない」
この言葉を聞いた荒木は一層研究に励んだといいます。
留学先での北里は当初、思うような研究成果を出せませんでした。それでも「熱と誠」の心で研究を持ち続けた結果、一流の研究者として認められるようになりました。この言葉は、北里の信念を表しています。
<学問には国境なし>
次に紹介するのは、1925年、日本で初めての国際学会(極東熱帯医学会)での北里の演説の一部です。
「昔より『学問には国境なし』と言うて居(お)りますが吾々(われわれ)の従事する医学などはその学理の研究においても、又その応用においても実際に国境を超越して居るのであります」
北里は「学問に国境はない」という言葉の重みを改めて訴えました。これは、当時の風潮を批判した一節と捉えることもできます。
第一次世界大戦中にスペインかぜが流行した際には、戦況に関わるとして多くの国が情報統制を行いました。国境を越えた感染症対策が取れないことで、スペイン風邪は猛威を振るいました。多くの研究者や医師はさじを投げましたが、北里は違いました。「軍事や政治などの要因で感染症の蔓延を阻止できないのであれば、恥である」と考えており、有効な手段を全世界で取り組もうと改めて強く訴えたのです。
一つの言葉からも、果たすべき使命のために、世界中で協力をしようと訴える北里の“姿勢”を感じることができるのではないでしょうか。

≪参考文献≫
『徹底解剖! 北里柴三郎 -不撓不屈の精神で予防医学の礎を築いた人-』 森孝之 出版文化社 2022年
『資料から見る北里柴三郎の功績』 森孝之編 学校法人北里研究所 2023年
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