「研究って、ひとりでやるものじゃない。」所属も年齢も越え、高校生も研究者も共に学ぶ 2 日間 第 39 回北里大学バイオサイエンスフォーラム

北里大学の学部生や大学院生らが、学部や専門分野の垣根を越えて研究成果を発表する「第39回北里大学バイオサイエンスフォーラム」が2026年8月6日~7日の2日間、相模原キャンパス(神奈川県相模原市)で開かれました。

会場に集まったのは310人。がん、感染症、海洋生物、天然化合物――。一口に「生命科学」といっても、研究テーマはさまざまです。
そして今年は、北里大学附属順天中学校・高等学校 (東京都北区)の高校生たちが、大学の研究者と直接意見を交わす「第2回北里順天探究ジュニアサミット」も同時開催。
若手研究者同士が専門分野を越えて出会い、高校生が研究の世界に触れる。そんな会場の様子をお伝えします。

■「研究をエンジョイして!」2日間がスタート

まずは開会式。医療衛生学部 石橋 仁学部長の
「2日間、発表をエンジョイして、今後の研究の発展につなげてほしい。」
という言葉から、フォーラムが始まりました。

■研究は「地道」。それでも、実験で証明できた瞬間が面白い

理学研究科のマスキーマイクラジャさんが取り組んでいるのは、光を使った新しいがん診断の実現に向けた基礎研究です。
理論上は「こうなるはず」と分かっていても、実際の実験がその通りになるとは限りません。
「理論で分かっていることを、実験で証明できた瞬間が一番面白いです」とマスキーさんは語ります。

そんなマスキーさんに、「研究者に向いているのは、やっぱり頭がいい人?」と聞いてみると、返ってきたのは少し意外な答えでした。
「一つのことを粘り強くやれる人だと思います。ひらめきだけではなくて、分かっていることを地道に検証して、一つずつつぶしていく。その繰り返しです」

実験材料を間違えて購入し、そのまま実験を進めてしまったこともあるそう。「失敗は数え切れないほどあります」と笑います。
 高校生の頃の自分へ一言伝えたいことを尋ねると、
「今、博士まで進学しているよ、って。高校生の頃は想像できなかったですね。実験をやっていたら、ハマっちゃいました」

ーー研究の入り口は、特別な才能ではなく、目の前の「面白い」を追い続けることなのかもしれません。

■アカハライモリの「毒」は、どこからやってくる?

別の会場で出会ったのは、海洋生命科学研究科の中澤勇人さん。
研究対象は、身近な両生類の一種、アカハライモリです。
実はアカハライモリはフグ毒を持っています。でも、そのフグ毒をどのようにして獲得しているかは、まだ分かっていません。

中澤さんは、イモリが陸上で暮らす時期の食料に着目。実際にイモリが何を食べているのかを確かめながら、毒の起源を追っています。研究は、実験室の中だけではありません。目的のイモリを探して、竹林や森に入ることもあるそうです。
「身近なのに、全然分からない。それが面白いと思いました」

研究室を見学した学部4年生の時にこのテーマに出会い、現在まで研究を続けています。
では、中澤さんが思う「研究者に向いている人」とは?
「研究そのものが好きな人ですね」

就職に有利だからでも、肩書が欲しいからでもなく、「研究が好きだから続ける」。
中澤さん自身も研究に熱中し、「朝からゲームをするみたいな感覚」で取り組むことがあるといいます。
そんな中澤さんは、今回の発表で若手奨励賞を受賞しました。

■高校生も研究者と“本気の議論” ジュニアサミット

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北里大学附属順天中学校・高等学校の高校生22人が参加した、「第2回北里順天探究ジュニアサミット」。

高校生たちが、取り組んでいる探究について大学の研究者に説明し、「実験は何回くらい行えばいい?」「ほかにどんな方法で確かめられる?」といった具体的なアドバイスを受けます。

きのこの菌類をテーマに探究している勝田理彩子さんは、実験の回数や測定方法などについて研究者から助言を受け、「自分だけでは思いつかなかった視点を知ることができました。参加する前は、大学の研究者に対して厳しそうというイメージもあったのですが、結構ラフに接してくれる方が多くて一緒に考えてくれました」と話します。

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先生と学生の距離が近く、違う学部の学生同士でも研究について話す姿を見て、「学部が違っても協力できるんだと思った」といいます。

生徒たちを見守っていた順天中高の中原晴彦教諭にも話を聞きました。
探究活動では、テーマを決めても「ここからどうすればいいんだろう」と立ち止まることがあります。だからこそ、自分とは違う考えを持つ人と話し、刺激を受けることが大切だといいます。

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「成功しても失敗しても、探究したプロセスそのものが自分のものになる。そういう経験をしてほしい」
さらに、今回のジュニアサミットで生徒たちに持ち帰ってほしいことを尋ねると、
「自分の話を聞いてくれる大人や、そういう場所があるということを知ってほしいですね」
と話しました。

普段の授業では、先生の話を生徒が「聞く」場面が中心。でも、ここでは高校生自身が研究について語り、大学の研究者たちがその話を聞き、質問を返します。
高校生が「教えてもらう人」ではなく、一人の探究者として研究者と向き合う時間になりました。

薬学部の小林昌宏准教授も、高校生ならではの自由な発想について、「我々ではなかなか考えないような柔軟な視点があり、こちらから質問したくなる」と評価。ジュニアサミットをきっかけに、さらに研究への興味を深めてほしいと期待を寄せました。

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■違う専門だからこそ、新しい視点が生まれる

「違う分野の人がいるからこそ、新しい視点が生まれる」
そう話すのは、医療衛生学部の松本俊英講師です。

例えば、獣医学部の研究でも、テーマが細菌感染なら別の学部・研究科の研究者が自分の専門知識から質問できる。専門分野が異なるからこそ、「そんな見方があったのか」と気付くことがあります。
松本講師は、バイオサイエンスフォーラムについて「こうした横のつながりができるのが、このフォーラムならでは」と話します。

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別の学部や研究科に所属する学生同士がこのイベントで知り合い、「自分はこんな実験をしている」「その方法なら知っている」と会話する。その出会いが、いつか新しい研究につながっていくかもしれません。

良い研究発表について尋ねると、
「色々な分野の人に対していかに分かりやすく伝えられるか」
という答えも。

自分と同じ分野の研究者だけが集まる学会とは違い、ここにはさまざまな専門の人がいます。だからこそ、相手が知らないことを丁寧に説明する力も必要になります。

■16人が若手奨励賞 研究は、次の研究へ

2日間の最後には、優れた研究発表を行った16人に「若手奨励賞」が贈られました。名前を呼ばれた受賞者たちが前に並び、会場から拍手が送られます。

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各会場で交わされた議論。多くの人が集まり、研究者同士の会話が絶えなかったポスター会場。そして意見交換会で生まれた、新しい出会い。

研究は、一人で机に向かい続けるもの――。
そんなイメージを持っている人もいるかもしれません。
でも、この2日間にあったのは、自分の研究を誰かに伝え、違う専門の人から問いをもらい、また研究室へ持ち帰る姿でした。

学生も、教員も、そして高校生も。
「それ、面白いですね」
そんな一言から、次の研究、そして所属を越えた共同研究が始まるのかもしれません。

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