
学祖・北里柴三郎は、知識と技術を社会に生かす「実学」を大切にしてきました。
北里大学の研究と社会とのつながりを紹介する「Social Good Research」。
今回は、東日本大震災の経験を経て、災害からの地域復興に取り組む朝日田卓・海洋生命科学部教授の研究を紹介します。
【これまでの記事はこちら】
朝日田卓・海洋生命科学部教授(上) 東日本大震災のインパクト
朝日田卓・海洋生命科学部教授(中) 「生命のゆりかご」の再生

三陸の海で地震や津波が海に与えた影響を研究してきた朝日田教授。その研究を地域社会に生かしていくため、東日本大震災で被災した海岸で、子供たちと生物観察会を行う体験学習プログラムを開発するなど、地域の学校や博物館などと連携して教育への活用にも取り組んでいる。
震災以前には、森林組合などの協力で、山への植樹などを通じて、森川海のつながりを小学生と一緒に観察し、「命の循環」をテーマに海や山、川にいる生物の状況を紹介する特別展示を博物館で行った。イベントは学校や市民からも大好評で、学校が博物館と大学と連携して、地域の自然環境を学ぶガイドブックを作成することになり、前述の教え子との打ち合わせが行われることになった。しかし、その教え子は津波の犠牲になり、ガイドブック作成は果たせなかった。だが震災後5年、その遺志を継ぐ学生たちの努力により、ガイドブックは完成した。「現在、ガイドブック3種類、ワークシート2種類が使用可能で、三陸の3市1町に配布されており、博物館や学校での学習に用いられている。これらに参加した学生たちも勉強になったようで、卒業した後も社会貢献をしようと思ってもらえれば一番だと思う」と成果を語る。
「北里柴三郎先生が大切にしていた“実学の精神”は研究者として当たり前のことかもしれないが、きちんと言語化して、後進に教えて、つないでいかなければいけない。我々は趣味で研究をしているわけではないので、研究が世の中に役立ってこそ意味がある。学生たちがそのことを感じ取れるような機会を提供していきたい」。朝日田教授は、北里博士のスピリッツを伝えていく。(おわり)

朝日田 卓(あさひだ たかし)
北里大学副学長・海洋生命科学部教授・北里柴三郎記念博物館長
専門は魚類学、水圏生態学。東日本大震災後の海の回復過程やダムが生態系に与える影響などの研究をしている。アラスカやグリーンランド、パラオなどでの研究歴もある。著書はNEO魚(共著、小学館)など。得意技は潜水、珍魚の味見。社会とつながる
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