砂塚敏明学長 国際化への思い 「生命科学の総合大学としてグローバルな問題への貢献を目指す」(下)

世界を救う「ワンヘルス」と国際化の未来

北里大学は、学祖北里柴三郎博士の「実学」の精神を受け継ぎ、グローバルな問題を解決する人材育成を進めるべく、ローベルト ・ コッホ研究所との連携をはじめとした国際交流を行っています。砂塚敏明学長が北里大学の国際化について、その展望を語りました。第3回は、「ワンヘルス」をテーマにした世界課題への取り組みと国際化の将来について聞きました。

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砂塚敏明学長 国際化への思い  「生命科学の総合大学としてグローバルな問題への貢献を目指す」(上)

砂塚敏明学長 国際化への思い  「生命科学の総合大学としてグローバルな問題への貢献を目指す」(中)

◇「ワンヘルス」に取り組むのが北里の使命

-北里大学は、医学部・獣医学部・海洋生命科学部などの生命科学分野と、データサイエンス分野を実践する未来工学部がある、生命科学の総合大学です。その幅広い研究領域で、ヒトと動物、それを取り巻く環境を包括的にとらえ、分野横断的な課題解決を目指す「ワンヘルス」に取り組みます。-

 砂塚 国際化という意味で期待しているのは海洋生命科学部ですね。現代社会では海洋汚染や海水温上昇の問題など、海の問題は我々地球上に生きるすべての生物にとって共通且つ非常に大きな、グローバルな課題です。海をグローバルな視点で見ていくことを通じて、様々な海外の研究機関や研究者との交流につながっていくことを期待していますし、そうした交流を活発にできる体制作りをしたいと思います。

 また、北里大学のように医療系学部がある大学で獣医学部もある大学はあまりありません。ワンヘルス*の観点では、牛や馬、豚などの動物は世界の食を考える意味で非常に重要で、その点で国際的な貢献ができるポテンシャルを持っていると思います。海洋や動物の研究を進めることで、地球温暖化という大きな問題について、対策の提言ができるようなればと思っています。

*ヒトと動物、それを取り巻く環境(生態系)は、相互につながっていると包括的に捉え、人と動物の健康と環境の保全を担う関係者が緊密な協力関係を構築し、分野横断的な課題の解決のために活動していこうという考え方。

厚生労働省HP「厚生労働省のワンヘルスに関する取り組み(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001162136.pdf)より

 そこに未来工学部のAIを組み合わせていきたいと考えています。現在、ガーナと国際交流が始まっていますが、ガーナの病院と日本で情報共有・データ分析をすることで、ガーナの医療に貢献できます。こうしたグローバルな連携とAIの精度を上げていくことで、10年後、20年後にどういう感染症が広がるかを予測できるようになると期待しています。

 感染症を予測できれば、世界保健機構(WHO)や国立感染症研究所などと情報共有することで世界的な危機管理につながります。さらに北里大学は創薬の能力を持っているので、感染症を予測し、治療薬の準備体制を取って国際貢献することが、北里大学らしい貢献だと思います。

アフリカや東南アジア、南米で薬が高くて買えないという課題に対し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智・特別栄誉教授が開発されたイベルメクチンは、無償でアフリカや南米に提供されています。地球全体の観点でいえば損得ではなく、人の命を救う薬を開発するのは北里大学の使命でもあるでしょう。

◇東南アジアやアフリカへ 国際化の将来

-北里博士は、生誕の地熊本でオランダ人医師のマンスフェルトから熱心な指導を受け医学を志し、ドイツに留学して数多くの業績を挙げました。北里大学の原点には国際交流があります。北里大学の国際化の将来は……。-

 砂塚 若い人たちがいろいろな交流をし、多様な価値観に触れることによって、人としての経験、器が大きくなると思いますから、オープンマインドでさまざまな経験をしてほしいです。もちろん専門をしっかり勉強することは最も大事ですが、グローバルの面で人との出会いも大事にしてほしいと思います。世界はこうやって動いているということを体感すること自体が非常に重要だと思っています。

 海外に留学する時、留学先でどんな事が起こるか不安はあると思いますが、行ってみるとみなさん優しく対応してくれます。何かあれば国際部がサポートするので、ぜひともためらうことなく、積極的にチャレンジしてほしいです。その時の経験が10年後、20年後に必ず生きてくるので、是非若いうちに経験してほしいと思います。

 今後は、アフリカや東南アジアとの共同研究を開始して、学生同士の交換留学を進めていきたいです。既にガーナ大学野口記念医学研究所と連携し、北里・野口感染症研究開発センターという組織が立ち上がっていて、感染症予防に関する学術交流が始まっています。このような取り組みをアフリカの他の国々、東南アジアの国々でも同様な組織やプロジェクトを立ち上げて、それを核にして交流を広げていきたいと考えています。

 医療だけではなく、環境問題、エネルギー問題も含めて、色々な角度でグローバルな共同研究または国際交流を深めていきたいです。特に最先端のアメリカやヨーロッパとの共同研究だけでなく、アフリカや東南アジアとの交流に力を入れて人材育成をすることで、国際的な貢献をしていきたいというのが私の夢ですね。(おわり)

砂塚 敏明(すなづか としあき)
北里大学学長・北里大学大村智記念研究所教授。主な研究分野は、微生物由来の生物活性天然物の発見、有機合成化学研究や創薬研究。大村智特別栄誉教授の後継者として、大村創薬グループで天然物に関する無尽蔵の可能性を引き出す研究を行っている。

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