
北里柴三郎の意思を受け継ぎ ローベルト・コッホ研究所と交流
北里大学の学祖北里柴三郎博士は、ドイツのローベルト ・ コッホ研究所に留学し、「病原微生物学の父」と呼ばれるコッホ博士に師事して、破傷風菌の純粋培養に成功するなど国際的な功績を挙げました。北里大学は、北里博士の「実学」の精神を受け継ぎ、グローバルな問題を解決する人材育成を進めています。砂塚敏明学長が、北里大学の国際化について、その展望を語りました。第1回は、ローベルト ・ コッホ研究所との連携について聞きました。
◇大村特別栄誉教授の発案でシンポジウムを相互開催
-北里博士の恩師であるコッホ博士は、細菌の染色法、培養方法などを独自に考案して発展させ、病原細菌学という新しい分野を開拓し、それまでの衛生学や防疫学を一変させました。1891(明治24)年、コッホ博士を所長としてローベルト・コッホ研究所が開設され、北里博士もコッホ所長のツベルクリン研究を手伝いました。その縁で北里大学と同研究所は1988年から合同シンポジウムをベルリンと東京で交互に行うなどの交流を続けています。-
砂塚 今お話に挙がった、近年のローベルト・コッホ研究所との交流は1988年にドイツの保健庁長官が北里博士との結びつきの深い北里研究所/北里大学との交流を深めたいと北里研究所を訪れたのがきっかけでした。当時、北里研究所副所長だった大村智特別栄誉教授が「せっかくの機会だから今後も定期的に交流をしよう」と提案し、2年ごとに、交互にシンポジウムを開催してきました。
ドイツ政府が支援するコッホ研究所は、日本でいう国立感染症研究所のようなところで、特にグローバルな感染症対策に力を入れています。一方、北里大学では感染症の治療薬開発に力を入れており、互いの連携を深くすることによって、世界的な感染症対策をしていこうという大きな目的で交流をしています。

◇新たに3つの連携プロジェクトが始動

-1990年から2018年まで15回のシンポジウムが開催されてきました。新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年に予定されていたシンポジウムが延期されましたが、2024年9月、第16回のシンポジウムがドイツで開催されました。-
砂塚 シンポジウム後に、各部門の担当者間でミーティングをして、研究における具体的なコラボレーションを検討し、3つのプロジェクトを共同で進めることに合意しました。
1つは地球上の水の衛生や環境の問題。特にアフリカやアジアの発展途上国では、水の環境に関わる感染症対策が重要であり、その対策を進めようというものです。
2つ目が耐性菌(AMR*)の問題。北里大学で行っている創薬研究の中で、耐性菌に効く薬剤を開発するために、北里大学だけではできないような部分をサポートしてもらって、成果を出していこうとしています。
3つ目は人工知能(AI)です。コッホ研究所には、グローバルな感染症のデータがあるので、それをAIで解析したい。北里大学では、未来工学部にデータサイエンスの専門家がいますので、情報交換をしながら解析を進めていこうとしています。
北里大学とコッホ研究所が互いにないものを補い合って、お互いにとってのメリットはもちろん、グローバルヘルスの視点からも大きなメリットがある、国際的な共同研究体制ができました。2年後のシンポジウムでは、これらのプロジェクトの進捗が報告できると思います。このプロジェクトを推進することでグローバルヘルスに貢献すること、更にプロジェクトを通じて国際水準の研究者を育成することが、北里大学の国際化の目指す先と考えています。(つづく)
砂塚 敏明(すなづか としあき)
北里大学学長・北里大学大村智記念研究所教授。主な研究分野は、微生物由来の生物活性天然物の発見、有機合成化学研究や創薬研究。大村智特別栄誉教授の後継者として、大村創薬グループで天然物に関する無尽蔵の可能性を引き出す研究を行っている。キャンパスのいま
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