
北里大学の学祖であり、日本の近代医学と公衆衛生の礎を築いた北里柴三郎博士。2024年には新千円札の肖像に選ばれ、改めて注目を集めています。そして、それから1年余り――いま、博士のふるさと・熊本県小国町では、博士の生涯を大河ドラマとして伝えようという署名活動が始まりました。博士の精神を受け継ぐ北里大学もこの想いに共鳴し、この活動を応援しています。
今回、小国町・渡邉誠次町長が、白金キャンパス(東京都港区)を訪れ、砂塚学長との対談が実現。博士の人となり、大河ドラマ化への願い、そして“志を未来につなぐ”という共通の想いについて語り合いました。
■ふるさと小国町で始まった署名活動

砂塚学長 渡邉町長、本日はようこそお越しくださいました。
小国町で北里柴三郎博士の大河ドラマ化に向けた署名活動を始められたと伺いました。私たち北里大学でも早速、署名を進めているところです。この活動は、どのような想いから始まったのでしょうか。
渡邉町長 ありがとうございます。きっかけは、博士が新千円札の肖像に選ばれたことでした。令和元年の発表の日、町中が歓声に包まれました。そして、「博士を大河ドラマで観たい」という声が自然と広がっていったんです。
「博士の顕彰事業の一環として、大河ドラマを実現したい」──その想いが、今の署名活動につながっています。新千円札の発行から少し時間がかかってしまいましたけれど、熊本県からも協力を得て、2025年7月に実行委員会の設立を行いました。10月に小国町の秋祭りがありましたので、そこで町民の皆さんに宣言をし、署名活動が正式に始まりました。

砂塚学長 博士が紙幣に登場したことで、町の誇りが目に見える形になり、そのことが大河ドラマ化の話へとつながったんですね。その熱量を直接伺えてとても嬉しく思います。どのくらいの署名数を目標にされているのでしょうか。
渡邉町長 まずは10万票を集めて、NHKへ署名を届けたいと思っています。最終的には50万票は必要と考えていますが、実は小国町は約6000人の人口なので、町外からの応援もいただいて実現していきたいです。博士は小国町出身ということが世間にはあまり知られていないため、この機会にできるだけたくさんの方に広報していきたいと思っています。
■千円札に込められた誇りと、町の歓喜

砂塚学長 先ほど、新札発表のときは町中が歓声に包まれたとおっしゃっていましたね。実際、町の皆さんはどれくらい盛り上がっていたのでしょう。
渡邉町長 それはもう、大変な盛り上がりでした。「北里博士が新千円札に!」というニュースが流れた瞬間から、町役場の電話が鳴りっぱなしで(笑)。
新札が実際に発行された2024年7月3日には、町民が集まって記念イベントを行いました。移動ATMを設けて、新札をその場で受け取る催しもあり、手にした町民は本当に嬉しそうでした。

砂塚学長 小国町では、博士の想いが教育やまちづくりに息づいているそうですね。
渡邉町長 はい。学校の道徳の授業では博士の生き方を学んでいますし、新札に採用されてからはより一層、教育の場で取り上げられるようになりました。イベントには全て「北里博士記念」と名を冠して開催していて、Tシャツやマスクなどのグッズも制作して、町全体で博士を身近に感じています。
■「信念の人」を大河で描くということ

砂塚学長 博士の大河ドラマ化を目指すうえで、どんな姿を描いてほしいとお考えですか。
渡邉町長 博士は厳しい方だったと聞きますが、その厳しさの裏には人への温かさがありました。「厳しさの中の裏側にある温かさ」のようなエピソードは、最近世間では希薄になっているような気がしていますので、その部分をぜひとも表現していただきたいです。弟子や家族との絆、人のために尽くす心。そうした“人間性”を描いてほしいですね。「科学者でありながら、人を思う教育者」──この二面性こそが魅力です。

砂塚学長 博士は官職を離れ、自らの信念を貫くために北里研究所を設立しました。福澤諭吉先生の支援を受けながら理想を実現しようとした姿勢は、まさに「信念の人」です。挑戦する勇気と信念を曲げない生き方をドラマで描くことは、現代を生きる私たちにも強いメッセージになります。
■小国町の自然が育んだ“やんちゃな子ども時代”

砂塚学長 博士を育んだ小国町についてもお聞かせください。どんな環境で子ども時代を過ごされたのでしょうか。
渡邉町長 小国町は自然豊かで、のびのび育てる風土があります。温かい人のつながりがある──そんな環境が博士の人間力を育てたのだと思います。博士はとてもやんちゃな子どもだったそうですが、人をまとめるリーダー気質があり、幼いころから周囲を引っ張っていたと聞いています。
砂塚学長 博士の人柄に惹かれて弟子たちが集まったのも、そうした原点があるからでしょうね。学問に向き合う厳しさと、人への誠実なまなざし。その両方を兼ね備えた人だったのだと思います。
■「人のために学ぶ」——博士の精神を未来へ

砂塚学長 博士の生き方は「学問や研究を社会に還元し、人の命を救う。」というものでした。この精神は、今も北里大学の教育や研究の根幹にあります。博士の志と人となりを大河ドラマという形で伝えられたら、どれほど多くの人に勇気を与えるでしょう。
渡邉町長 まさにその通りです。博士の“終始一貫”という教えは、今も小国町の教育の柱です。子どもたちには“最後までやり抜く力”と“人のために尽くす心”を伝えていきたいです。小国町のまちづくりの理念も「ALL FOR THE NEXT‼︎〜すべては次世代のために〜」です。博士の志を、次世代を担う子どもたちの未来へつないでいきたいと考えています。
■没後100年の節目に向けて

砂塚学長 2031年は、博士の没後100年という大きな節目になります。
そのタイミングで大河ドラマが実現すれば、博士の志が全国に広がり、若い世代にも受け継がれていくでしょう。北里大学としても、博士の精神を未来へ伝えるために、この署名活動をしっかりと支援していきます。
渡邉町長 ありがとうございます。小国町としても、博士を語り継ぐ責任と誇りを胸に、署名活動をさらに広げていきたいと思います。博士の生涯を描くことで、若い世代も志を持って前に進めるきっかけになれば嬉しいです。
北里柴三郎NHK大河ドラマ実現プロジェクト
▶ 署名はこちらhttps://s-kitazato.jp/taiga/


渡邉 誠次 (わたなべ せいじ)
1970年熊本県阿蘇郡小国町生まれ。北里柴三郎博士の生誕地。
地元杖立温泉を産湯に浸かり、山川草木と戯れ育つ。
熊本県立済々黌高等学校卒業。「木原官房長官が高校の先輩、くりぃむしちゅーが高校の同級生」
令和元年小国町長就任。ALL FOR THE NEXT‼︎〜すべては次世代のために〜をコンセプトにまちづくりに挑戦中。
ちなみに実家は旅館経営。町長就任直前までは料理人だった変わり種。
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